
最近の若手は、向上心がない
そう感じて、悩んでいませんか?
頑張って育てようとしても響かない、任せても成長しない——そんな部下に頭を抱えている上司は少なくありません。
でも、その「やる気のなさ」、本当に本人だけの問題でしょうか?


この記事では、会社員歴15年以上で現役10名の部下を持つ管理職である筆者が、「向上心のない部下」への理解と向き合い方を、実体験ベースでお伝えします。
先に告白すると、わたしは「向上心がない」と見立てた部下が、実は誰よりも出世欲が強かった——という失敗をしています。だからこそ、決めつける前の見極めから始めます。
- 「向上心がない」と決めつける前にやるべき見極め
- タイプ別の特徴・NG・対策と、実際に効いた関わり方
- 手を尽くしても変わらないときの”長期戦”への切り替え方
- 「向上心は個性」という、疲弊しないための線引き
読み終えるころには、あなた自身のストレスを減らしながら、部下それぞれの力を引き出すヒントが手元に残っているはずです。
部下ではなく、自分自身が「向上心を持てない」と悩んでいる方はこちらへ


向上心のない部下は”理解”から始める


向上心のない部下に悩んだときは、無理に変えようとせず、「なぜ向上心が持てないのか」を理解する姿勢が最も大切です。



もっと頑張ってほしい



やる気を見せてほしい
と思うのは、上司として自然な気持ちです。
しかし、部下本人の状況や価値観を理解せずに一方的な期待や指摘を続けてしまうと、逆効果になるだけでなく、ハラスメントと受け取られるリスクさえあります。
まずは、“なぜこの部下は向上心を持てないのか”を冷静に観察・対話し、そのうえで適切な関わり方を選ぶことが、上司としての第一歩です。
観察・対話の場づくりには1on1が有効です。進め方はこちら。


“向上心がない”と決めつける前に


対策の前に、いちばん大事な話をさせてください。
「向上心がない」というあなたの見立ては、間違っているかもしれません。わたしは実際に、間違えました。
めのめMEMO
あるメンバーから「明日の研修は家の都合で休みます」と連絡がありました。何ヶ月も前から案内していた、明確にステップアップを期待して会社から与えられた研修です。あとで確認すると、急病などではなく「業務ではなく研修だから」と軽い気持ちで調整可能な家事を引き受けていた——。この一件で、わたしは彼を「向上心がない、視座が低い」と見立てました。もともと話す機会の少ない部下だったこともあり、その一件だけで、です。
ところが後日、懇親会の席で彼にこう聞かれたのです。「めのめさん、もっと出世したいです!どうしたらいいですか!?」——ここまでまっすぐ言ってくる部下は他にいません。むしろ誰よりも出世欲が強い部下でした。彼に足りなかったのは向上心ではなく、「そのために何をすればいいか」という努力の方向性だったのです。
似た話で、異動してきた部下について前任の上司から「あいつは向上心がなくてダメ」と引き継がれたことがあります。実際に一緒に働いてみると、口下手で少し個性的なだけで、主体性も挑戦意欲も高い人でした。一面だけで決めつけない。人から聞いた評価を鵜呑みにしない。自分の目で確かめる——遠回りに見えて、これが一番の近道です。
「向上心がないように見える」状態の裏には、努力の方向性が見えていないだけ、環境が合っていないだけ、というケースが本当に多くあります。
だからこそ、次のタイプ別の話も「決めつけるためのラベル」ではなく、「背景を理解するための手がかり」として使ってください。



「向上心がない」と感じたときほど、自分の見立てや偏見に凝り固まっていないかを一度疑う。わたしの一番の教訓です。
向上心のない社員に”頑張れ”は逆効果


向上心がないように見える部下にも、それぞれに“理由”があります。
たとえば、努力が報われなかった経験や、過去の失敗、評価制度への不満、そもそも今の仕事に興味が持てないなど…。
向上心がないのではなく、「向上心を持ちづらい状況に置かれている」ことも少なくありません。
そしてここが特に重要なのですが、向上心を持てない理由を無視して「なぜやらないんだ」「もっと頑張れ」と伝えることは、部下の自尊心を傷つけ、あなた自身の信頼や立場を揺るがすリスクにもつながります。
悪意がなくても、部下にとってはプレッシャーや人格否定と感じることもあり、ハラスメントと捉えられる可能性があるのです。
また、時には部下本人が「成長したくない」「頑張る必要を感じていない」という価値観を持っている場合もあります。
そのときに重要なのは、「すべての社員が向上心を持つべき」という前提を一度外すことです。


部下の価値観に合わせて“割り切り”、求めすぎないマネジメントを選ぶことは、決して手抜きではありません。むしろ、多様性を尊重する現代の組織においては、必要なマネジメントスキルのひとつです。



わたしも「頑張れ」と言いたくなったら、「この人は何なら頑張れるのか」に言い換えるようにしています。
向上心が見えない部下のタイプ別対策
部下の“やる気のなさ”にはパターンがあります。
タイプに応じて関わり方を変えることで、マネジメントの負担を軽減できます。
現状維持タイプ


「今のままでいい」「変化が面倒」と考える、安定志向の強いタイプです。
■ 判断するための特徴・行動傾向
- 自分の仕事に関する改善提案や提案発言がほとんどない
- 異動や新しい仕事に対して拒否反応を示す(「今は忙しいので」「自分にはまだ早いかと」)
- マニュアルや過去のやり方に強くこだわる
- 「前例がない」「今のやり方で困っていない」が口癖
- 評価や昇進にあまり関心がない
■ NGアプローチ
- 「とにかく変われ」「挑戦しろ」と圧をかける
自分のペースや安定を大切にするタイプにとっては、変化を強制されると防衛本能が働き、反発・萎縮しやすくなります。 - 「他の人はもっとやってるよ」と比較する
他人との比較は、モチベーションの源泉にはならず、「自分は評価されていない」という劣等感を助長します。 - 「このままだと評価されないぞ」と脅す
外発的動機づけ(評価や昇進)に関心が薄いため、響かないだけでなく、職場への不信感を増す可能性があります。
■ 改善に向けた対策
- 変化を「負担」ではなく「安心」に見せる
変える理由やメリットを丁寧に伝える(例:「この方法にすると、定時で帰れるようになる」) - 小さな成功体験を用意する
一気に大きな変化を求めず、簡単な改善から着手 - 選択肢を提示して任せる
強制ではなく「AとBならどちらがいい?」と選ばせることで主体性を引き出す - 意図と期待を言葉にして渡す
「この案件でチームリーダーを任せたい。昇格にはメンバーを付けた実績が必須だから頑張ってね」のように、その仕事が本人の何につながるかまで説明する - 安定志向も組織にとって必要であると認める
安定性を評価するフィードバックも取り入れることで、安心感が育ちやすくなる
めのめMEMO
個人的に一番対処が難しいと感じるのが、このタイプです。現状にある程度満足していたり、「変わらず安定していること」自体に価値を感じるので、大幅なマインドチェンジが難しいです。
今の仕事は問題なくこなせているのに、新しい仕事の打診には「今はちょっと忙しいので…」と後ろ向きな部下がいました。仕事量を調整して様子を見ても、空いた時間は残った仕事を”より丁寧に”やることに使われ、状況は変わらず。生真面目さは評価できるのですが、伸びるタイプは空いた時間で新しい取り組みやキャッチアップを始め、それこそ仕事を取りに来ます。比べてしまうと、どうしても向上心が低く見えてしまうのが正直なところです。
基本的には、新しい取り組みも手順を本人に用意させ承認してから実行させるなど、既存の延長線上に緩やかなステージアップを用意するのがよいでしょう。変化を好まないのは強みでもあります。難しくはないが発展性がなく、皆がやりたがらない仕事を長年文句も言わずに続けて、一定の評価を受けている後輩もいます。
自信がないタイプ


「頑張ってもムダ」「自分には無理」と思い込み、向上心を抑え込んでいるタイプです。
■ 判断するための特徴・行動傾向
- 新しい仕事の打診に「自分には無理です」と消極的
- 過去の失敗を引きずっているような発言が多い(例:「また怒られるかも」)
- 報連相の頻度が少なく、ひとりで抱えがち
- 他者からの評価に過敏で、ミスを恐れて行動を避ける
- 自分の強みを自覚できていない(「得意なことがわからない」と言う)
報連相が少ない部下への対策はこちらで詳しく解説しています。


■ NGアプローチ
- 「もっと自信持てよ」と抽象的に励ます
意図は前向きでも、本人には「無責任に言ってるだけ」と響かず、「自信がない自分はダメなんだ」と思わせがちです。 - 「前に失敗したけど、今回は大丈夫だろ」と軽く流す
過去の失敗に真剣に向き合ってほしいタイプにとっては、無神経に感じて信頼を損なう恐れがあります。 - 成果が出ないときに一切触れない
自信がないタイプは「もう見放された」と感じやすく、関係性が悪化しがちです。沈黙は誤解を生むことも。
■ 改善に向けた対策
- ロールモデルを紹介する
似た境遇から成長した先輩の事例を見せて、「自分にもできるかも」と感じさせる - 小さな成功体験を積ませる
すぐ結果が出るタスクや、本人の得意分野を活かせる業務を任せて成功体験を提供 - 過程を丁寧に承認する
結果よりも「取り組んだこと」「工夫した点」を言語化して承認する - フィードバックをポジティブに構成する
改善点があっても「ここは良かった」を先に伝える順序を守る
めのめMEMO
このタイプは一度波にのれば、伴走をしっかりとすれば改善することが多いです。慎重な性格で自分のやることに自信のない若手がいましたが、今では安定して成果を出せるようになり、安心して仕事を任せられています。わたしがやったのは、徹底的に具体的なポジティブフィードバックをすることと、努力の方向性を整えることだけです。
もう一つ効いたのが、スモールステップです。いきなり「リーダーをやってみよう」ではなく、まずリーダーの仕事を少しだけ巻き取ってもらう。リーダーが休みの日の代理役を任せてみる。そんな小さな成功体験を積ませると、成長実感が出てきたのか、自分から「次はこの仕事を巻き取りたい」と言ってくるように変わりました。
最近、部下の様子がおかしい…そう感じたらこちらの記事を読んでみてください


無関心に見えるタイプ


仕事をする目的や意義を見失い、目の前の業務に意義を感じられないタイプです。
■ 判断するための特徴・行動傾向
- 「なんのためにこの仕事をするのか」とよく質問してくる
- 受動的で、必要最低限の仕事しか手を出さない
- 周囲や組織に対してシニカル(皮肉っぽい)な態度をとる
- 将来のキャリアについて尋ねても答えが曖昧
- 社内外の活動や成長機会への関心が薄い
「すぐ答えを求めてくる」タイプの部下にはこちらが参考になります。


■ NGアプローチ
- 「働くってそういうもんだよ」と割り切らせる
本人は“納得感”を求めており、こうした発言は「この人は話しても無駄」と感じさせてしまう危険性があります。 - 「いいからやれ」と言い切る
意味や背景が見えないまま業務を振られると、ますます興味ややる気を失ってしまいます。 - 「文句があるなら辞めれば?」と突き放す
本当に辞めるか、心を閉ざすかのどちらかに向かいやすく、関係が一気に断絶する可能性があります。
■ 改善に向けた対策
- 他部門・外部の人と関わらせる
新しい視点を得ることで、仕事の意味を再発見するきっかけになることがある - 業務の背景や意義を具体的に共有する
「これは顧客の○○に繋がっている」「この業務が終われば皆が助かる」といった意味づけを明示 - 個人の価値観や興味に結びつける
過去の経験や趣味との共通点を見出し、「君の○○力が活かせる業務だよ」とつなげる - 将来について対話する時間を持つ
理想の働き方や、人生で大切にしたいことを聞き、会社との接点を探る
めのめMEMO
分かりやすく「仕事に無関心」な部下がいました。仕事は最低限、後ろ向きで皮肉屋、キャリアの話もしたがらない。あるとき客先で彼がミスをして、クライアントからきつく叱られる事態がありました。危機感を覚えるほど落ち込んでいたので、いつもは誘わない食事に誘ったんです。
お酒が入った彼の口から最初に出てきたのはクライアントへの罵詈雑言と会社への文句でしたが、次第に「キャリアが不安」「やりたいことはあるが漠然としていて言い出せない」という本音を語ってくれました。彼は決して、仕事に関心がないわけではなかったのです。
別の部下では、本人の志向や得意不得意からフィットしそうなキャリアモデルを伝え、実際に社内でその仕事をしている人に何人か引き合わせました。普段の業務や「どうやってその職種に就いたのか」を本人の口から聞けたことで、目指したい仕事が見つかり、それがそのままモチベーションになったケースもあります。紹介するだけでなく、実在の人に会わせるのがポイントでした。
“自称努力家”の空回りにも注意


少し変わり種ですが、「向上心はあるのに空回りしている」ケースもあります。
本人は努力家のつもりなのに成果が出ない——問題は努力の量ではなく、”努力の定義”が狭いことにあります。
めのめMEMO
「努力はしているのに、同期に比べて成果が出ていない」と相談してきた部下がいました。確かに彼は残業も多く、資格試験にも積極的です。両方を横断して見ている立場から、わたしはこう伝えました。「溜まった仕事を残業で処理するのも、報奨金目当ての資格勉強も、努力と言えるかもしれない。けど同期の彼がやっている”次の仕事のために色んな人へ話を聞きに行く””余力ができたら、やったことのない仕事がないか上司に聞きに来る”というのも努力だよね。その辺りは見えている?」
彼はショックを受けていました。その後、劇的に動きが変わったわけではありません。それでも「自分には才能がない」と下を向くことはなくなりました。見えない努力の存在に気づけたこと自体が、彼にとっての前進だったと捉えています。
「頑張っているのに評価されない」と悩む人の背景はこちらでも解説しています。


補足:複数タイプが重なっていることも


現実には、これらのタイプは単独で現れるとは限りません。
たとえば「現状維持タイプで、かつ自信喪失タイプ」というように、複合的に現れるケースもあります。
大切なのは、「なぜこの部下はそうしているのか?」という視点で背景を丁寧に見極めることです。
NGアプローチの多くは、「言っていること自体が間違い」というよりも、伝え方やタイミングの問題です。
一呼吸おいて「この言葉で、相手はどう感じるだろう?」と想像する習慣が、信頼関係づくりには効果的です。
不安型・内向型の部下はHSP視点も参考にしてみてください。


それでも変わらないときの長期戦


タイプに合わせて手を尽くしても、変わらないことはあります。
そんなとき、一番やってはいけないのが「仕事が落ち着けばやる気を出してくれるだろう」という“待ちの放置”です。わたしの経験上、放置で自然解消したケースはありません。
かといって、次々に施策を試し続けると、こちらが疲弊します。
そういうときは、短期の試行錯誤をやめて、腰を据えた”長期戦”に切り替えます。
- 後輩の指導役・相談役に任命する:教える立場になることで、視点と責任が変わるきっかけを作る
- 長期目標・キャリアプランを一緒に決めて、定点で確認する:毎回新しい施策を打つのではなく、決めた計画の進捗を淡々と見る
- 上長に相談し、異動などの環境変化も選択肢に入れる:環境が変われば活きる人もいる。抱え込まない



長期戦への切り替えは「諦め」ではなく、自分が疲弊せずに関わり続けるための戦略です。
まとめ|向上心は個性、成果は設計


わたしは、向上心の有無は「個性」だと考えています。
高い人にとってそれは強い武器になります。でも、大事なのは向上心そのものではなく、自分のパーソナリティや能力を踏まえて、再現性高く成果を出し続けること。向上心の高い部下はそれを導きやすいという特性があるだけで、そうでない部下にも、やれることは必ずあります。
- 「向上心がない」という見立ては間違っていることがある。一面や他人の評価で決めつけない
- 「頑張れ」の押し付けは逆効果。タイプ別に背景を理解して関わり方を変える
- 変わらないときは放置せず、指導役任命・キャリアプラン定点確認・異動相談の”長期戦”へ
- 向上心は個性。求めすぎず、本人の特性で成果が出る設計を考えるのが上司の仕事
すべての部下に同じ熱量を期待すると、あなたも本人も疲弊してしまいます。
長期的な取組で解決するケースもあれば、「別の現場なら活躍できる」と判断して配置を見直すことが最適なこともあります。
割り切り=放棄ではなく、割り切り=最適化です。
まずは明日、「向上心があって当たり前」という前提で部下に接していないかを振り返り、1on1で「何があれば前向きになれそうか」を一緒に考えるところから始めてみてください。
「育てる」より「引き出す」、「変える」より「受け入れる」——それが現代のマネジメントの基本です。
この記事が、あなたのチームづくりの一助になれば嬉しいです。
「部下に悩む上司」向けのシリーズはこちら




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