
あの人、最近ずっと残ってるな……でも今は忙しい時期だし
部下の仕事量が増えているのは見えている。
でも、どう手をつければいいか分からないまま時間が過ぎていませんか。
IT業界で管理職として働き、いまは10人ほどの部下を見ています。
忙しい時期になると、わたしも同じことを考えます。
そこでつい選びたくなるのが、自分で引き取ってしまうことです。
いちばん早いし、相手も助かる。そう思えるからです。
ただ、実際にやってみて分かったのは、巻き取りは最後の手段にしたほうがうまくいくということでした。
その前にやることが、3つあります。
- 忙しい時期ほど、部下の無理が見えにくくなる理由
- 勤怠表や成果物より先に表れる、負荷のサイン
- 仕事を減らすときの4つの順番と、その判断基準
- 棚卸しで「やらなくていい」に変わりやすいタスクの型
- ピークを越えたあと、同じことを繰り返さない仕組み
読み終えるころには、明日まず何から手をつけるかが決まっているはずです。
いきなり全部を変える必要はありません。
量ではなく「仕事が遅い」ことに悩んでいる方は、こちらをどうぞ。


頑張れてしまう人ほど危ない


忙しい時期の部下を見ていて、意外に感じることがあります。
潰れそうな人より、むしろ頑張れてしまう人のほうが多いのです。
理由ははっきりしています。
締めが見えている時期は、ゴールが具体的だからです。
「ここまで走れば終わる」と分かっていると、人はかなり無理がききます。
本人も「いまだけだから」と思えるので、しんどさを口に出しません。
だからこそ、上司が気づきにくくなります。
走れているように見えるときほど、無理の中身は見えなくなっているのです。



問題が起こってからではなく、「大丈夫です」と言える余裕があるうちに動くほうが、結果的に早く片づきます
普段との差で気づく


では、どこを見ているか。
わたしが一番重視しているのは、絶対的な基準ではなくその人の平常運転からのズレです。
残業時間はもちろん見ます。
ただ、数字に出るころにはもう手遅れに近いことも多いのです。
- 勤怠入力そのものが遅れる
残業時間ではなく、入力が滞ること自体がサイン。事務作業をする余裕すらない状態になっている - 取引先から「クレーム未満」の話が届く
普段その人と働いている関係者と関係を作っておくと、苦情になる手前の小さな懸念を伝えてもらえる - 身だしなみが乱れる
いつもきちんとしている人ほど、ここに先に出る
1つめは特に見逃されがちです。
勤怠を「入力させるもの」と考えていると、遅れていること自体の意味に気づけません。
このほか、返信が遅くなる・タスクを失念する・遅刻が増えるといった変化もサインになります。
ただしこれらは、負荷の問題を越えている可能性もあります。
仕事量の問題ではなさそうだと感じたら、こちらを先に読んでください。


まず一緒に棚卸しする


ここからが本題です。
仕事を減らすとき、わたしが最初にやるのは棚卸しです。
ポイントは、本人に任せず一緒にやることです。
負荷が高い状態の人は余裕を失い、視野がかなり狭くなっています。
本人には「全部やらなければいけない仕事」に見えていても、横から眺めると事情が違います。
後回しにできるもの、そもそもやる必要のないものが、たいてい出てきます。
- 本人が必須ではない会議への参加
出席者リストに名前が残っているだけ、というものが驚くほど多い - 目的が不明瞭な資料づくり
誰のために作っているか分からないまま続いている。「前任者から引き継いだので」が典型 - 二重管理
進捗やタスクを別々のツールで多重に管理している - 過度なチェック
細かく見ること自体が、チーム全体の生産性を落としている場合がある - 必要以上の作り込み
内部資料なのに、成果につながらない部分に時間をかけすぎている
もうひとつ、この機会に片づけたいものがあります。
年度のはじめから持ち越してきた「時間ができたらやろう」系のタスクです。
ここまで手がつかなかったということは、結局その程度の優先度だったということ。
わたしは忙しい時期を、こうしたタスクをまとめて捨てる機会にしています。



減らす相談のつもりが、積もっていたタスクの整理そのものになることも多いです
会議そのものを減らす方法は、こちらにまとめています。


本来の持ち主に返す


棚卸しをしても量が収まらないときは、次に振り直しを考えます。
基準はひとつだけです。
そもそも、その人がやる必要性の低い仕事かどうか。
意外と多いのが、本人が知らないうちに他人の仕事を引き受けているケースです。
後輩が詰まっていたので代わりにやった。
取引先から振られたので受けた。
メンバーの成果物が気になって、自分で手を入れて直していた。
どれも善意から始まっています。
ただ、自分の負荷を無視して引き受けているなら、それは持ち主に返すべき仕事です。



でも、返したら相手が困るんじゃないですか



そこは上司が引き取ります。返す相談をするのは、本人ではなくこちらの役割です
本人に「返してきなさい」と言うだけでは、たいてい動けません。
相手との関係を気にしているからこそ、抱えてしまっているのです。
チャレンジは”預かる”と伝える


3つめは、成長のために任せていた仕事を外すことです。
本来なら続けてほしいものなので、ここはいちばん気を使います。
外し方を間違えると、本人は「期待されなくなった」と受け取ります。
量を減らしたはずが、やる気まで削いでしまっては本末転倒です。
だからわたしは、外すときに必ずセットで伝えることにしています。
「いったん預かるだけで、落ち着いたらまたお願いしたい」と、再チャレンジの機会まで示すのです。



これは来期またお願いします。いまは手放してもらったほうが助かります
ひと言あるかないかで、受け取り方はまったく変わります。
機会を取り上げたのではなく、時期をずらしただけだと伝わればいいのです。
巻き取るのは最後の手段


ここまでやって、それでも収まらないとき。
はじめて、上司自身が引き取ることを考えます。
順番を最後にしているのには理由があります。
巻き取りは、いちばん早く見えて、いちばん何も解決しない手段だからです。
量は確かに減ります。
ただ、なぜその人に仕事が集まったのかは、何も変わっていません。
しかも上司の手が埋まると、チーム全体を見る余裕がなくなります。
次に誰かが苦しくなったとき、今度は気づけません。
引き取る中身は、事務作業を優先します。
判断が要らず、誰がやっても結果が変わらないものから手をつけるのが安全です。
逆に、本人が担当として積み上げてきた仕事を上から取り上げるのは、できるだけ避けます。
経緯を知らないまま触ると、かえって手戻りが増えることもあります。
引き取ることが相手の成長にどう影響するかは、こちらで詳しく書いています。


落ち着いたら仕組みに変える


棚卸しと振り直しには、ひとつ弱点があります。
ピークを越えて落ち着くと、同じ状態に戻りやすいことです。
その場で減らすだけでは、半年後にまた同じ相談をすることになります。
だから余裕が戻ったタイミングで、再発を防ぐ話を一緒にします。
“見せて”と言える形にする
まずは仕事を見えるようにします。
といっても、新しいツールを導入するような大げさな話ではありません。
わたしがやっているのは、Todoリストのフォーマットと運用を渡すことです。
そのうえで定期的に「見せて」とお願いするところまでをセットにします。
形式を渡すだけでは、だいたい続きません。
見せる相手がいて初めて、書く意味が生まれます。
担当を決めてチェックを手放す
仕事が一人に偏る原因は、たいてい2つです。
担当が決まっていないか、不安で手放せていないかのどちらかです。
前者は、誰のものでもない仕事を気づいた人が拾い続けている状態。
後者は、後輩やメンバーの仕事を全部細かく見てしまっている状態です。
どちらも、役割をはっきりさせることで減らせます。
チェックリストを用意してメンバー同士で確認できるようにし、報告フォーマットで見る側の負担も下げる。
仕組みにしてしまえば、個人の頑張りに頼らずに済みます。
権限移譲そのものの進め方は、こちらで詳しく扱っています。


有休は衝突する前に配る
忙しい時期に必ず起きるのが、休みと納期のぶつかり合いです。
これは起きてから捌くより、起こさない設計のほうがずっと楽です。
基本は、先に計画させること。
そして自分も堂々と取ることで、休むのが当たり前という空気をつくることです。
あわせて、お互いをフォローできる形を普段から指導しておきます。
「いまが回っていればいい」で済ませていると、誰かが休んだ瞬間に止まってしまうからです。



それでもぶつかったら、納期か休みのどちらかを動かせないか、まず自分が動きます
まとめ|順番を間違えない


部下の仕事を減らすとき、大事なのは手段の数ではありません。
どの順番で手をつけるかです。
- 1. 一緒に棚卸しする
本人は視野が狭くなっている。会議・目的不明の資料・二重管理・過度なチェック・作り込みすぎが外れやすい - 2. 本来の持ち主に返す
基準は「そもそもその人がやる必要があるか」。返す交渉は上司がやる - 3. チャレンジは預かる
外すときは再チャレンジの機会までセットで伝える - 4. 巻き取るのは最後
引き取るなら事務作業から。原因は何も解決していないと自覚しておく - 落ち着いたら仕組みに変える
可視化・役割の明確化・休みの先行計画で再発を防ぐ
全部を一度にやろうとしなくて大丈夫です。
まずは気になっている一人と、30分だけ棚卸しの時間を取ってみてください。



これ、そもそも自分がやらなくてもいいやつでした
この一言が出れば、その時点で量は減りはじめています。
巻き取るのは、そのあとで間に合います。
量ではなく仕事の速さが気になってきたら、こちらもどうぞ。


「部下に悩む上司」のシリーズはこちら



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