仕事は嫌いじゃない。むしろ、やりがいも感じている。
でも──上司と合わない。もう顔を合わせるのもしんどい。
そんな葛藤を抱えながら、毎朝出勤している方は少なくありません。
「上司が嫌い」なのに「仕事は好き」というこの状態は、自分の中で矛盾を抱えているようで、判断をとても難しくします。
この記事では、会社員歴15年以上、現役で10名の部下を持つ筆者が、そんな悩みを整理しながら、
- なぜ上司に強いストレスを感じるのか
- 自分はどう行動すべきか(続ける or 離れる)
を、冷静に見つめ直すヒントをまとめました。
読み終えたとき、あなたが「自分はどうしたいのか」を迷わず言葉にできる状態になることを目指しています。
もし、相性というよりは上司のマネジメント力不足で困っている方はこちらの記事も参考にしてみてください。

上司との相性と、仕事のやりがいは切り離して考えていい

「上司が嫌い」と感じる自分を責める必要はありません。
実際、仕事へのモチベーションがあるにもかかわらず、人間関係、とくに上司との関係で苦しんでいる人は多くいます。
ここで大切なのは、「仕事が好き」と「上司が嫌い」を無理に一緒に考えないことです。
上司との関係はたしかに日々の働きやすさに大きく影響しますが、それはあなたの「仕事に向いているかどうか」や「能力」とはまったく別の話です。
むしろ、上司の言動によって、本来の実力が発揮できなくなっている可能性もあります。
つまり、あなたが今感じている「やりがい」や「手応え」は大切にすべきですし、
一方で、「上司がストレスの源になっている」ことにも、きちんと目を向ける必要があります。
まずはこの2つを切り分けて考えること。
それが、「続けるべきか、離れるべきか」を冷静に判断するための第一歩です。
「上司が嫌い」と感じる理由は?主な5タイプで整理してみよう

「上司が嫌い」とひとことで言っても、その背景やストレスの感じ方は人それぞれ。
ですが、多くの場合、上司の言動には一定のパターンがあります。
ここでは、実際によくある5つのタイプに分類し、読者の方が「自分のケースはどれか」を整理できるように解説します。
① 感情的・非論理型

気分で指示が変わったり、怒鳴ったり無視したりと、感情をコントロールできない上司。
理屈が通じず、「今日は機嫌がいいか悪いか」がパフォーマンスに直結してしまいます。
② 不公平・ひいき型

一部の部下ばかりをかわいがったり、明らかに差をつけて扱う上司。
「数値や事実ではなく、人によって態度を変える」姿勢が見えた瞬間、信頼関係は大きく揺らぎ、チーム全体の士気にも悪影響を与えます。。
③ マイクロマネジメント型

細かすぎる指示・管理・口出しが止まらない上司。
自分で考えて動く余地がなく、常に「監視されている」ようなストレスを感じやすくなります。
④ 無責任・丸投げ型

指示が曖昧で、トラブル時は責任を取らず、逆に部下に押しつけるタイプ。
管理能力がない上司に振り回されることで、仕事そのものが不安定になりがちです。

⑤ パワハラ・モラハラ型

人格否定・過度な干渉・暴言などを繰り返す明確なハラスメント上司。
精神的ダメージが蓄積しやすく、放置しておくと心身の不調を招く恐れがあります。
「自分の上司はこのどれかに当てはまるかも…」と感じたら、そのケースに応じた適切な対処法を検討することが大切です。
嫌いな上司への対処法──タイプ別に現実的な選択肢を整理しよう

上司に対して「嫌い」「無理」と感じたとき、感情のままに反発するのではなく、冷静に“対処の選択肢”を持つことが大切です。
ここでは、先ほどの5タイプの上司ごとに、現実的かつ効果的な対処法を紹介します。
① 感情的・非論理型 → 「巻き込まれず、距離をとる」戦略
このタイプの上司は、対話や改善が通じにくいため、期待しすぎないことが基本です。
対応のポイントは、「感情に引きずられずに受け流すこと」と「物理的・心理的な距離を置くこと」
- 反論よりも“はい・わかりました”でやり過ごす(議論は避ける)
- 言われたことは記録に残しておく(後から守れるように)
- 客観的な視点を保つ(上司の感情=自分の価値ではない)
- 接触を最小限にする

② 不公平・ひいき型 → 「他人ではなく“自分軸”に集中する」

ひいき上司に対しては、比較や承認欲求に引っ張られすぎないことが大切です。
「誰に評価されるか」より「自分が何を積み上げているか」に意識を向けましょう。
- 評価を上司以外にもらえる環境(同僚・別部署)を意識する
- 嫌な気持ちは信頼できる人に言語化して発散する
- 長期的に「実力がものをいう職場」を探すことも視野に入れる
- 自分なりに目標を立てて、達成や成長を自分で感じられる環境を作る
③ マイクロマネジメント型 → 「信頼を生み出す対応+適度な報告」

細かく口出しされる場合は、“逆に信頼される”ように動くことが鍵になります。
一定の報告や可視化を意識しながら、上司の不安を和らげる働き方を工夫しましょう。
- 小さな報告・進捗共有を先回りして行う
- 質問や提案は「選択肢」で示す(Yes/Noで決められるように)
- 成果を具体的に見せる(信頼構築の材料に)
④ 無責任・丸投げ型 → 「タスクの境界線を明確にして、自衛する」

このタイプには、「自分の守備範囲」を明確にすることが最優先。
曖昧な指示は確認し、必要以上の責任を抱え込まないようにしましょう。
- 指示が曖昧なら確認して記録に残す(口頭だけで済ませない)
- 「誰が何をやるか」を明確にして巻き込みを防ぐ
- 責任の押しつけには冷静に反論 or 第三者を巻き込む判断も視野に
(できれば上司の上司などが最適)
⑤ パワハラ・モラハラ型 → 「記録・相談・距離。自分の心身を最優先に」

このタイプには「正面から向き合う」必要はありません。
むしろ逃げる準備をしながら、安全を確保することが優先されます。
- 言動を日時・内容含めて記録(証拠として)
- 社内の相談窓口(人事・産業医)に相談
- 限界を感じたら、休職や転職など心身を守る手段を選択肢に

対処法は、「一発逆転」を狙うのではなく、日々の摩耗を減らすための小さな習慣の積み重ねが重要です。
それでも「どうにもならない」と感じたら、無理をせず環境そのものを変える判断も大切にしてください。
めのめMEMO
以前、ある新人が私のチームに配属された際のことです。
担当する案件が決まるタイミングで、そのまま案件の責任者である上司のもとにアサインされました。最初のうちは特に問題もなく、順調に業務が進んでいるように見えました。
しかし、案件が繁忙期に差し掛かると、次第に上司と新人の間でコミュニケーションのすれ違いが目立つようになり、やがて双方から私のもとに相談が寄せられるようになりました。
最終的には、新人が担当する案件を変更し、それに伴って上司も別の人に変更することで、事態は収束しました。
このケースでは、確かに上司のマネジメント力に課題はありました。ただし彼はプレイヤーとしては非常に優秀な人材であり、部下を放置していたわけでも、ましてやハラスメントを行っていたわけでもありません。むしろ、ロジカルに説明を重ねても、どうしても期待通りに動けない新人に対して、「これ以上どう接すればよいのか分からない」という状態に陥っていたのです。
一方の新人も、新人らしい素直さよりもプライドが先行してしまい、「分からない」「できない」といった助けを求めるサインを出せないまま、気まずさだけが募っていったようでした。結果として、上司の方も共感的に寄り添う余裕を失い、関係が悪循環に陥ってしまったのです。
こうしたケースでは、誰かが一方的に悪いというより、「相性」の問題であることが少なくありません。人間は完璧ではないし、誰とでもうまくやっていけるとは限らない。だからこそ、無理に関係性を修復しようとするよりも、思い切って組み合わせを変える方が現実的で、チーム全体にとっても健全な場合があります。
ちなみにその後、二人とも今も元気に、同じ会社でそれぞれの持ち場で活躍してくれています。
「仕事は好きだけど上司が嫌い」──その先に、あなたが主導権を握る働き方を

「上司が嫌いだけど、仕事は好き」。
これは決してワガママでも、甘えでもありません。
むしろ、会社員が自分のキャリアややりがいに真剣に向き合っているからこそ、
人間関係のストレスに悩むのは、自然なことです。

ここまで整理してきたように、
嫌な上司との関係は「感情」だけでなく「対処と行動」で改善できる可能性があります。
そしてそれでも難しいときは、「環境そのものを変える」という選択も、あなたにとって正当な手段です。
✅ 明日から実践できる“小さな一歩”
- 上司の言動に振り回されないために「〇〇されたら、こう返す」とシミュレーションしておく
- 愚痴ではなく「相談」できる信頼できる人を1人見つける
- 自分のストレスサイン(体調・気持ちの波)を意識的にモニタリングする
- 「どうしたいか」を紙に書き出して、客観視する
- ハラスメントや職場自体が合わないと感じる場合は、転職サイトやキャリア相談で情報収集だけでも始めてみる
あなたのキャリアの主導権を握るのは、あくまで“あなた自身”です。
「上司が嫌い」という感情にフタをするのではなく、
その感情をきっかけに、自分の働き方を整えるチャンスにしていきましょう。
自分をすり減らす必要も、好きな仕事を諦める必要もない

「上司が嫌い」と感じることは、決して珍しくありません。
けれど、「仕事は好き」という思いがあるからこそ、
すぐに辞める決断もできず、葛藤が続いてしまうのもまた自然です。
この記事では、そんなあなたが自分を責めず、
冷静に状況を整理し、“自分で選べる働き方”へと一歩踏み出すための考え方と対処法をまとめてきました。
- 「上司との相性」と「仕事のやりがい」は切り離して考えていい
- 上司のタイプごとに、適切な対処法がある
- 好きな仕事は今の職場以外でも必ずできる
もし今、「毎朝、出社前から憂うつになる」ようなら、それは黄色信号かもしれません。
あなたの心とキャリアを守るために、立ち止まって考える時間はとても価値があります。
必要なのは、衝動的な決断ではなく、“自分のために選ぶ”という意志を持つこと。
その積み重ねが、あなたにとって「納得できる働き方」へとつながっていくはずです。
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