育休から復帰した部下への向き合い方|管理職のための受け入れ・支援ガイド

アイキャッチ

育休中の部下が、もうすぐ復職する。
その日が近づくにつれて、

どこまで配慮すればいいのか分からない

気を使いすぎても、普通に接しすぎても失敗しそう

チームの仕事はちゃんと回るだろうか

正直、自分の時代には男性の育休なんてなかった…

そんな不安や戸惑いを感じていませんか。

部下の相談に頭を抱える上司

管理職として経験を積み、
仕事の進め方にも一定の自信はある。
それでも「育休明けの部下への向き合い方」だけは、
明確な正解が見えにくいテーマです。

良かれと思ってした配慮が、
実は部下のやる気やキャリアの芽を摘んでしまうこともあります。
一方で、何も考えずに以前と同じ接し方をすれば、
本人だけでなくチーム全体に無理が生じることもあります。

育休復帰は、
「元に戻す」イベントではありません。
部下にとっても、上司にとっても、
新しい働き方を一緒に再構築するスタートラインです。

この記事では、現役マネージャーで10名程度の部下を持つ筆者が、
育休復帰者を迎える上司向けにやるべきことや意義を整理していきます。

本記事を読んでわかること

  • 復職前に準備しておくべきこと
  • 復職後に気をつけたい接し方と考え方
  • 育休支援が、なぜ上司自身のメリットにもなるのか

読み終えたときに、
「まず、最初の面談で何を話せばいいか」
「どんなスタンスで関わればいいか」
が、少しでもクリアになることを目指しています。

自分が育休を取得する側の場合はこちらの記事を参照

目次

復帰者の新しい働き方構築に伴走しよう

育休からの復職にあたって、
多くの上司が無意識のうちに考えてしまうのが、

どこまで元に戻せるだろうか

以前と同じように働いてもらえるだろうか

という視点です。

しかし、育休復帰は
「元に戻る」ことを前提に考えるとうまくいきません。

復帰=育休前の状態ではない

リセットボタン

育休期間中、部下のライフステージは大きく変わっています。
たとえ勤務時間や役割が一見同じに見えても、
勤務時間外の生活は、復職前とはまったく別物です。

育休前からの変化

  • 朝や夜の時間は子ども中心になる
  • 急な体調不良や保育園からの呼び出しが発生する
  • 自分のためだけに使える時間は、ほとんどなくなる

こうした変化は、本人の努力や工夫では埋められない部分も多く、
「以前と同じ働き方」を前提にするほど、
本人にもチームにも無理が生じてしまいます。

だからこそ、育休とそこからの復帰は
働き方を“再設計するタイミング”として捉える必要があります

部下本人が「育休前と全く変わらない働き方で大丈夫」というスタンスの際はむしろ注意が必要です。
育休期間中の準備不足や、無理がきかねない可能性があります。

「パートナーが時間に自由が利くので大丈夫です!」
と言っていた復帰者が、家庭と仕事とのバランスを取れず、心身に不調をきたして休職するというケースもこれまで見てきました。
当たり前の話ではありますが、子供が増えるということはそれほど大きな影響のあるライフイベントなのです。

上司の役割は”判断”ではなく”伴走”

ハイタッチ

復職者に対して、
上司が良かれと思ってやりがちなのが、

きっと大変だろうから、こうしておこう

この仕事は無理そうだから外しておこう

と、上司側で先回りして判断してしまうことです。

しかし、この姿勢は
知らず知らずのうちに、部下の選択肢や成長機会を狭め、
モチベーションを奪ってしまう原因にもなります。

育休復帰後に求められる上司の役割は、
正解を与えることではありません。

育休復帰者と対話すべきポイント

  • 今、どんな働き方が現実的なのか
  • どんな仕事ならチャレンジできそうか
  • どんなサポートがあれば前向きに取り組めるのか

これらを、本人と対話しながら一緒に考えること
言い換えれば、「判断する上司」ではなく、
伴走する上司でいることが重要です。

自信を持てない部下への伴走に悩んでいる方はこちらの記事も参考にしてください

“配慮しない”でも”放置しない”

空の天秤

伴走というと、
「常に気を配り、特別扱いすること」だと誤解されがちです。

しかし実際には、

  • 過剰な配慮は、本人を腫れ物扱いしてしまう
  • 一方で、何も聞かずに任せきりにするのも危険

この両極端を避けることがポイントになります。

大切なのは、
コミュニケーションの量と質を増やすことです。

こまめに状況を確認し、
困りごとがあれば早めに軌道修正する。
そして、上司の思い込みで決めず、
必ず本人の言葉を起点に考える。

このスタンスこそが、
育休復帰者の新しい働き方を支える土台になります。

コミュニケーションを増やすと言っても過度に干渉しろという訳ではありません。むしろ相手は生産性高く仕事を終えたいと思っているので、邪魔にすらなりかねません。
接触回数を増やす、心理的安全性を確保する、など相手が困ったり、迷っているときに相談しやすい環境を整えてあげてください。

育休復帰支援が重要な理由

育休復帰支援という言葉に対して、
どこか「会社の制度だから」「部下のために仕方なくやるもの」
そんな印象を持っている管理職も少なくありません。

ただ、実際には育休復帰支援は、
上司自身とチームを守るための取り組みでもあります。

育休復帰支援は”構造の課題”

連動する歯車

育休復帰が難しくなる原因は、
本人の意欲や能力不足ではありません。

チームの構造上の問題

  • 特定の人に仕事が集中している
  • 長時間働ける人を前提に業務が組まれている
  • 急な欠員に耐えられない体制になっている

    育休復帰者が現れることで、
    これまで見過ごされてきた歪みが一気に表面化します。
    だからこそ、復帰支援は
    「特定の個人への配慮」ではなく、
    チーム全体の働き方を見直す機会と捉えることが重要です。

    最大のメリットは”属人化の解消”

    バックアッパー

    育休復帰支援に本気で向き合うと、
    必ず直面するのが業務の棚卸しです。

    業務の見直しポイント

    • この仕事、本当にこの人しかできないのか
    • もっと簡略化できないか
    • 他のメンバーに分けられないか

    こうした見直しは、
    結果的に属人化の解消につながります。

    誰か一人が抜けただけで回らなくなるチームは、
    管理職にとっても大きなリスクです。
    育休復帰支援をきっかけに業務を整理することは、
    チームのレジリエンスを高め、
    上司自身の負担を減らすことにもなります。

    そもそも、育休自体が半ば強制的に人材のローテーショが必要になるイベントです。私は寧ろ良い機会だと捉えて、計画的な引継ぎを進めたり、グループ全体の人材ローテーションを推進することで、役割の固着化を防ぎ、グループ全体にナレッジが蓄積されるようにしています。

    業務効率化は”時間制約”から生まれる

    割けた時計

    育児中のメンバーは自然と業務指示や働き方への要求が高まってきます。

    育児中のメンバーでありがちな働き方への要求事項

    • 会議は短く終わらせたい
    • 無駄な作業は減らしたい
    • 優先順位を明確にしたい

    これは一見すると制約のようですが、
    実際には業務効率化を強制的に進める装置になります。

    なんとなく続けてきた会議や前例踏襲で残っている作業…
    こうしたものを見直すことで、
    チーム全体の生産性が底上げされるケースは少なくありません。

    第一子の育休から戻り、パワフルになった先輩が、時間通りに仕事を終えて帰るため、無駄な会議の廃止や会議時間の短縮、業務時間外の会議設定の禁止、などを推進していったことは、今でも私の強く記憶に残っています。”母は強し”ですね

    心理的安全性が高まり、チームが強くなる

    育休復帰を支える文化があるチームでは、心理的安全性が育ちやすくなります。

    育休復帰を支える文化があるチームの特徴

    • 困ったときに助けを求めやすい
    • お互いの事情を尊重し合える
    • 長く働き続けたいと思える

    これは育児中のメンバーだけの話ではありません。
    将来、介護や病気、ケガなど、
    誰にでも起こり得るライフイベントに対しても、
    「このチームなら大丈夫」と思える土壌になります。

    結果として、離職リスクが下がり、
    チームへのエンゲージメントも高まっていきます。

    育休支援は、管理職としての成長機会

    多様な制約を持つメンバーを活かす経験は、
    管理職としてのスキルを一段引き上げます。

    多様なメンバを活かすために磨き上げられるスキル

    • 業務を構造的に捉える力
    • 優先順位を明確にする力
    • 対話を通じて合意形成する力

    これらは、育休復帰支援に限らず、
    あらゆるマネジメントシーンで活きる力です。

    育休復帰支援は、
    決して「特別な人のための対応」ではありません。
    管理職として、組織を前に進めるための実践的なマネジメント
    その一部なのです。

    多様な価値観が認められるようになった社会。
    雇用が流動化し、人口減に悩む日本においては、様々な人材を活かすマネジメントはとても需要の高いスキルです。
    育休支援を通じて市場価値の高い人材を目指しましょう。

    育休復帰者の上司がすべき具体策

    育休復帰支援で重要なのは、
    特別な制度や高度なマネジメント手法ではありません。
    日々の関わり方と、いくつかの視点を持てるかどうかです。

    ここでは、
    復職前・復職直後・その後の継続的な関わり
    の3つのフェーズに分けて整理します。

    復職前|期待をすり合わせ、土台を整える

    土台

    このフェーズの目的は、
    復職者の働き方を「上司の想像」で決めてしまわないことです。

    復職前面談は”事務連絡”で終わらせない

    復職前面談というと、簡単な確認で終わりがちです。

    一般的な確認事項

    • いつから復帰するか
    • 時短勤務にするか
    • その他の会社の制度の利用はどうするか

    もちろん重要ですが、
    それだけでは復帰後の不安は解消されません。

    少なくとも、以下のようなポイントは、
    対話する時間を意識的に確保したいところです。

    一歩踏み込んだ確認事項・共有事項

    • 復帰後、どんな役割を担いたいと考えているか
    • チームが今どんな状況にあるか
    • 想定されるリスク(急な欠勤など)と、その備え
    • その他、復帰に向けて抱えている不安があるか

    この段階で明確な答えが出なくても構いません。
    「キャリアの話をしてもいい」「不安を口にしてもいい」
    そう感じてもらうこと自体が、復職にむけた復帰者の安心につながります。

    不安は吐き出すだけで和らぎます。
    私も経験しましたが、こちらは当然、「相談してもらえば業務調整可能」と思っているようなケースも、本人は相談してよいか不安を抱えているというケースも少なくありません。
    復帰者側も「思い込み」で制約を作ってしまわないよう、話しやすい、相談しやすい雰囲気を意識的に作ることが重要です。

    業務はそのまま戻さず、棚卸しする

    育休前に担当していた業務を、
    そのまま本人に戻す必要はありません。

    むしろ、現状業務を見直し、改善する絶好の機会と捉えましょう。

    育休を機会に見直したいポイント

    • 今のチームに本当に必要な業務か
    • 他のメンバーでも担える形にできないか
    • 属人化していないか

    この整理をしておくことで、
    復職者だけでなく、
    チーム全体が柔軟に動ける土台が整います。

    復職直後|関係性の再構築

    日本人サラリーマンたち

    復職直後は、
    上司も部下も探り合いになりやすい時期です。

    このフェーズの目的は、
    信頼関係を壊さずに、仕事のリズムをつくることです。

    陥りがちな”配慮の罠”を自覚する

    復職直後、上司がやりがちなのが
    過剰な配慮です。

    育児で大変だろうから

    今は責任のある仕事は避けた方がいいだろう

    こうした判断は善意から生まれますが、
    結果的に本人の成長機会や意欲を奪うことがあります。

    いわゆるマミートラックや
    アンコンシャス・バイアスは、
    悪意がなくても起こります。

    だからこそ、
    まずは自分がそうした判断をしやすい立場にいる
    という自覚が重要です。

    判断は上司がしない。必ず本人に確認する

    大切なのは、
    上司が結論を出さないことです。

    この仕事についてはどう思う?

    挑戦するとしたら、どんなサポートが必要か

    選択肢を提示し、
    判断は本人に委ねる。

    この姿勢が、
    「配慮されている」ではなく
    「信頼されている」という感覚につながります。

    通常、上位者の仕事は”判断する”ことです。その認識に間違いはありません。一方でキャリアや働き方は、あくまで本人に”判断”を委ねることが重要です。

    復帰後継続|成果と成長を両立

    方法性

    復職して一定期間が経つと、
    次に課題になるのが評価やキャリアの話です。

    このフェーズの目的は、
    育児と仕事を両立しながら、キャリアが止まらない状態をつくることです。

    評価軸を”時間”から”成果・アウトプット”へ

    育児中のメンバーにとって、
    長時間働けることを前提とした評価は大きな負担になります。

    だからといって、
    評価を甘くする必要はありません。

    重要なのは、基準や期待を明確にし、共有することです。

    明確にすべきポイント

    • 何をもって成果とするのか
    • どんなアウトプットを期待しているのか
    • どのような指標で評価を行うのか

    限られた時間で成果を出すこと自体が、
    高い難易度を伴います。
    その点を正しく評価することで、
    本人の納得感も、チームの公平感も保たれます。

    今回育休明けの部下向けの取り組みとしてかきましたが、
    基準や期待の明確化は、復帰者以外にも公平に行いましょう。
    普段から行っておけば、育休明けの特別な対応として行う必要はなくなりますし、チーム全体が勤務制限や制約のあるメンバを受け入れやすい文化が醸成されていきます。

    “今できること”だけで役割を固定しない

    復帰後しばらくは、
    「今できること」だけで仕事を切りがちです。

    しかしそれだけでは、
    役割が固定化し、キャリアが停滞してしまいます。

    様々な視点も含めて、定期的に対話することが重要です。

    対話したい視点

    • 将来的に挑戦したい仕事は何か
    • 段階的に任せられそうな役割はないか
    • キャリアの志向に変化は起きていないか

    限られた時間の中でも、
    成長の余地を残す。
    それが、長く活躍できる関係につながります。

    一緒に考える上司であろう

    敏腕弁護士

    育休明けの部下への向き合い方に、
    明確な正解はありません。

    大切なのは、

    どこまで配慮すべきか

    以前と同じように戻していいのか

    と一人で悩み続けることではなく、

    本人と対話しながら、その都度すり合わせていく姿勢です。

    上司の役割は、
    先回りして判断することでも、
    特別扱いをすることでもありません。

    育休復帰者と対話すべきポイント

    • 今、どんな働き方が現実的なのか
    • どんな仕事ならチャレンジできそうか
    • どんなサポートがあれば前向きに取り組めるのか

    これを、
    「判断する上司」ではなく
    「伴走する上司」として一緒に考えること

    その積み重ねが、
    復帰者の安心感につながり、
    チームの柔軟性を高め、
    結果としてあなた自身のマネジメント力を育てていきます。

    もし、もうすぐ復職面談を控えているなら、
    まずは完璧な答えを用意しなくて構いません。

    復職に向けた面談での確認事項

    • 何を不安に感じているか
    • どんな働き方をイメージしているか
    • どんなサポートがあればよさそうか

    この3点を聞くことから始めてみてください。

    流れ星

    育休復帰支援は、
    特別な誰かのための対応ではありません。
    多様な人が長く活躍できるチームをつくるための、
    管理職としての大切な実践です。

    少しずつで大丈夫です。
    今日の対話が、チームの土台を作る一歩になります。

    この記事が、その一歩目を踏み出す手助けになれば嬉しいです。

    よかったらシェアしてね!
    • URLをコピーしました!
    • URLをコピーしました!

    コメント

    コメントする

    CAPTCHA


    目次