うまく伝わらない…そんなとき、対話を前に進めるリカバリー術

「ちゃんと説明したのに、なんで伝わらないんだろう」

クライアント、上司、部下……日々のやりとりの中で、そんなふうに感じたことはありませんか?

こうした“伝わらない問題”にぶつかったとき、私たちはつい「もっと分かりやすく伝えなきゃ」「相手に理解してもらわなきゃ」と考えがちです。

でも、こうした状況の多くは、「あなたの説明の正しさ」や「相手の理解力」が問題ではないケースがほとんどで、“自分のアプローチ”を見直す方がずっと効果的です。

10年以上、IT企業の社員として様々な業界のクライアント対応をしてきた経験から、私はようやくそのことに気づきました。この記事では、「どうすれば話が通じるようになるのか?」という悩みに対し、実践してきた6つのアプローチをご紹介します。

「伝わらない」というピンチを乗り越えることで、相手と信頼を勝ち取るチャンスに変えていきましょう。

目次

結論:相手を説得しようとせず、自分のアプローチを見直す

「伝わらない」という場面にぶつかったとき、「説明の仕方が悪かったかもしれない」や「相手が理解できていない」と考えるのは論理的に自然なことです。

ただし、「伝わらない」ということは相手(人間)がいるということであり、
人間は必ずしも論理的な判断をしないという事実から、
論理的な結論が「伝わらない」という問題解決につながらない…という場面がとても多いです。

現実として、相手や環境を変えようとしても、なかなか変得られるものではありません。
あなたが本当に「伝えたい」と願っているのであれば、
あなた自身に変えられる解釈、アプローチ、言葉の選び方を変えてみることが効果的です。

では、具体的にどうすればよいのか。わたしの経験から、有効だった6つのアプローチを紹介します。

1. 論破しない

意外と多いのがこのパターンです。

自分の説明に、賛成ではない意見や話の流れに沿わない質問がきた場合、つい反論してしまった経験はありませんか?
自分の正しさを押し通そうとすると、その果てにあるのは場の崩壊です。

わたしは過去、これをクライアント相手にやってしまい、場を凍らせた経験があります。

ビジネスにおける話し合いの場は、建設的な議論を行い、合意形成を行うのが目的であることが多いはずです。

相手の言葉を傾聴し、意図を汲み取りましょう。その上で、目的達成に必要なアプローチを組み立てしましょう。
ほとんどケースでは論理的な説明を再度求めていることは少ないはずです。

2. 相手の感情に配慮する

繰り返しになりますが、相手は感情を持つ人間です。

相手の言葉の裏にある不安、怒り、戸惑い。
それに気づかないまま話を進めると、すれ違いは深まる一方です。
「どうしたのかな?」「もしかして困ってる?」という視点を持つことで、やりとりが一変することもあります。

  • 全体像の話をしているのに各論の話をしてくる
    話が抽象的過ぎてイメージができていない可能性。一番手前のプロセスを具体的に説明してから、関連性を意識してもう一度説明。
  • こちらの提案や相談に曖昧な反対意見を述べてくる
    理解や納得できていないわけではなく、上位者や組織への説明案に困っているのかも、この場は引いて後で個別に組織説明の支援も含めて提案
  • 一見関係ない話を急に持ち出す(例:昔のプロジェクトの失敗例など)
    過去の苦い経験による不安や、防衛反応の可能性。「それって、似たような場面で失敗したことがあったんですか?」と掘り下げ、感情に共感を示してから前向きな方向に整理。

相手への共感は必要ありません。相手の感情を理解する努力してみてください。

3. 前提をすり合わせる

自分が当然と思っていることが、相手にとってはまったくの初耳だった、失念していたということはよくあります。
特に、背景や業務知識の差がある相手や、複数案件を担当するハイクラス相手の場合は、前回の振り返りを行ったり、この場の経緯や目的を丁寧に説明して、認識を一つずつ確認しておくことが重要です。

またスライドを使って説明するときは、投影しているスライドのメッセージをハッキリ伝えましょう。
聞き手がスタンスをハッキリできるのでお勧めです。

  • 議論したいのか
  • 承認してほしいのか
  • 意見がほしいのか
  • 質問しているのか
  • ただの参考情報なのか

スライドにメッセージを入れるのがベストですが、準備不足の場合はスライドの冒頭で説明することで補いましょう。

4. 言葉の定義を合わせる

言葉の定義も同様にズレが多いです。業界用語や会社独自の用語については勿論ですが、
よく問題になるのは「短期/中期/長期」や「すぐ/あとで」などの誰でも知っているけど曖昧な言葉です。

私はある業界のクライアントに

「長期的なロードマップのドラフトをかいてほしい」

と言われ、苦労して5年で引いていったところ、求められていたのは1年のだった…という経験もありました。

私の経験は笑い話ですが、こうした“言葉のズレ”が多くの誤解の元になり、
打ち合わせの場では、お互いの頭の中のイメージはあっているのに言葉のすれ違いから紛糾するといったケースもあります。
「話が噛み合わない」と思ったら、まずはあいまいな言葉の定義を1ずつ確認していくクセをつけましょう。

5. 出力のペースを落とす

シンプルに相手が情報量の多さやスピードに処理しきれずに置いて行かれている可能性があります。
一呼吸おいて、「ここまで大丈夫ですか?」と確認しながら進めましょう。
用意してきた議題を100%説明しきるよりも、70%合意する方が重要です。

また、テンポよく進め過ぎずに、今全体のどこを話しているか示しながら話すのも効果的です。
何十枚もあるスライドの流れを記憶しながら話を聞いている人はいません。

6. 戦略的撤退

どうにも立ち行かない場合は一度場を切り上げて、仕切り直しましょう。
その状況でいくら話し合いを続けても双方の時間を浪費するだけです。
一度引いて、お互いにクールダウンして作戦会議をしてから、再度打ち合わせをするようにしましょう。

場を収束する場合は、次の場を建設的にするために以下の対応をしてから一度締めましょう。

  • 次の話し合いの場を設定する
  • 議題の内、話がかみ合わなかった議題を合意する
  • 次回に向けてお互いが持ち帰って整理が必要な点を合意する

正常に進んだ議題の決定事項は確認して帰りたいところですが、個人的にはおススメしません。
感情的になっている人がいる場合、再燃焼するリスクがあるためです。
場が解散してから、メールなどで議事として送りましょう。

まとめ:相手が腹落ちできるポイントを探ろう

伝えるという行為は、相手の理解を操作することではなく、論理的にも感情的にも腹落ちできる接点を探すことだと思います。
相手の感情や前提、理解のスピードを尊重しながら、自分の話し方・構成・姿勢を整えていくことで、自然と対話は前に進んでいきます。

どれもシンプルですが、実践には意識と工夫が必要です。
「伝わらない」と感じたときこそ、今回紹介した6つのアプローチを思い出してみてください。

感情的にも腹落ちさせるような関係性を積み上げることで、きっと相手にとってあなたは信頼される人物になっているはずです。

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