「子育て罰」に感じた違和感と得たもの|在宅パパの本音

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「子育て罰」。
その言葉を初めて見たとき、正直、少し身構えました。

めのめ

子育てって……罰なの?

「仕事に家事、育児…時間がない」「副業に挑戦できなくなった」「転職しづらくなった」——そういった感覚は、確かに覚えています。
家族ができてから、自分の時間が減り、選択肢が狭まったのは事実です。

でも、「罰」という言葉だけでは、自分の実感をうまく表現できない。
そんなモヤモヤが残るのです。

わたしはIT業界で会社員として働き、在宅勤務歴は5年以上。
現在は管理職として複数のメンバーを抱えながら、小学生の子どもを育てています。
在宅勤務×子育て当事者として、「子育て罰」という言葉と正直に向き合ってみました。

この記事を読み終えるころには、「子育て罰」という言葉の意味を理解したうえで、その言葉ひとつでは語りきれない、もうひとつの視点が手元に残るはずです。

そんなことよりも、育児しながら働くのは「とにかく忙しい」…という方はこちらの記事も読んでみてください

目次

“子育て罰”(チャイルドペナルティ)とは

子育て罰

ノーベル賞が明らかにした正体

チャイルドペナルティ(child penalty)とは、子どもを持つことで生じる社会的・経済的な不利益のことです。
特に女性・母親に大きな影響が出ることから、「マザーフッドペナルティ」とも呼ばれます。

この概念の広がりを加速させたきっかけの1つが、2023年にノーベル経済学賞を受賞したクラウディア・ゴールディン氏(ハーバード大学教授)の研究です。
ゴールディン氏は「greedy jobs(貪欲な仕事)」という概念を提唱。
「常に対応可能な状態」を求める長時間労働・即応型の職場文化が、育児との両立を難しくしていると指摘しました。

子育てペナルティは個人の努力不足ではなく、職場の構造的な問題が原因だ——という視点は、「自分が悪いのかも」と感じていた人にとって、大きな救いになる指摘です。

めのめ

「頑張れば両立できる」という言葉の裏に、構造的な無理が隠れているんですよね。

日本——出産で賃金が約70%減

日本のチャイルドペナルティは、先進国の中でも特に深刻です。
財務省総合政策研究所の調査によると、第1子出生後1年間で、女性の賃金は出産前と比べて約70%もの減少が確認されています。

デンマークでは同じ条件で約30%の減少にとどまるため、日本がいかに「ペナルティが大きい国」かがわかります。

日本と海外のチャイルドペナルティ比較

  • 日本:出産後1年間で女性の賃金が約70%減少(財務省総合政策研究所)
  • デンマーク:同条件で約30%減(比較的影響が小さい)
  • 日本は先進国の中でチャイルドペナルティが最大規模の国のひとつ

“子育て罰”が広まったきっかけ

「チャイルドペナルティ」という言葉自体は2010年代から海外で研究が進んでいましたが、日本で「子育て罰」として広く知られるようになったのは2024年ごろのことです。
NHKの特集や、SNSでのトレンド入りをきっかけに認知が一気に広がりました。

「なんか損してる気がしていたけど、これって言語化できる問題だったんだ」と気づいた人も多く、特に育児中の会社員の共感を呼びました。

片働き・共働きそれぞれの選択肢や実情に関心がある方は、こちらも合わせてどうぞ。

父親にも”子育て罰”はあるのか

給与明細をデスクで確認している会社員

昇進・転職・副業が制限された

チャイルドペナルティの議論は、どうしても女性中心になりがちです。
賃金の直接的な落ち込みという点では確かに女性への影響が大きい。
でも、父親側にも「子育て罰」と呼べる変化は確実に起きています。

わたし自身を振り返ると、子供が生まれてから以下のことがしづらくなりました。

子育てで制限されたこと(父親視点)

  • 時間:育児の時間はもちろん、家事自体に割かれる時間も多くなり、自分の時間や夫婦の時間が減った
  • 転職:タイミングを選べなくなった(収入リスクを取りにくい)
  • 昇進:目指すこと自体は続けたが、残業や出張のある役割は引き受けにくくなった
  • 副業:妻から「今はしてほしくない」とはっきり言われた

特に副業については、「今はしてほしくない」というひと言が、挑戦への大きなブレーキになったのは正直なところです。
妻の立場から見れば当然の言葉だと今でも思っています。
でも、あの瞬間に「選択肢の自由が減った」と強く実感したのも事実でした。

めのめ

家族がいる以上、リスクの取り方はどうしても変わりますよね。それが良い面もあれば、制約になる面もある。

女性側の大変さは別次元だった

ただ、正直に書くと——わたしが感じた「制限」は、妻の経験した大変さとは次元が違います。

妻のつわりが続いた数ヶ月間、家事の多くを引き受けながらも、私はほぼ通常通り仕事を続けられていました。
出産後も、食欲も戻らず、睡眠不足で追い詰められていたのは妻のほうです。
女性にとって、出産し子供を持つことは文字通り命を削っているのだと、ゾッとしました。

思えば男性育休が進んでいる現在の職場でも、保育園から「お子さんが熱を出しました」と連絡が来るたびに、申し訳なさそうに席を立つのは、いつも女性の同僚や部下でした。

めのめ

「父親にも制限がある」と訴えたい意図はなく、「子育て罰」という言葉が主に女性向けの文脈で語られる中で、父親側から見た実感も正直に共有してみたいと思い今回テーマに扱ってみました。

男性の育休について、過ごし方や準備を詳しく知りたい方はこちら。

それでも”罰”とは思えない理由

朝の光を浴びながら、穏やかに前を向く男性

子供がいたから挑戦できた

「子育て罰」という言葉に違和感を覚えた理由が、ここにあります。

たとえば「転職」や「昇進へのこだわり」。
確かに家族がいなければ、もっと気軽に動けたかもしれません。
でも逆に——家族がいなかったら、そもそも本気で動こうと思っただろうか?

独身のままだったら……そこそこの収入と安定で、満足していたかもな。

正直なところ、わたしはそう思います。
独身であれば、「ほどほどの収入・ほどほどの責任・安定した日常」で十分に満足していた可能性が高い。
昇進をそこまで本気で目指さなかったはずです。

子供が生まれてから、「もっと良い環境を用意したい」「より良い将来を作りたい」という気持ちが、明確な推進力になりました。
制約があったからこそ、挑戦の理由が生まれた——そう感じているのです。

制約が自分を前に進めた側面

もうひとつ、子育てを通じて変わったことがあります。
時間の使い方への意識です。

在宅勤務5年間で、「仕事と生活の境界をどう作るか」を常に考えてきました。
子供が生まれる前は、だらだらと仕事を続けることもありました。
でも子育て後は、「使える時間に限りがある」という現実が、集中力と効率を上げる方向に働いてくれています。

制約が増えたことは事実です。自由は確実に減りました。
でも、その制約が、自分の視野を広げ、行動を変え、結果として人生を前に進めた——そういう側面もあったと思っています。

めのめ

これはあくまで私のケースです。子供がいないと、向上心が湧かないとか、時間を無駄に使ってしまうと、言いたいわけではありません。子育ては「制限」と同時に「強制的な変化」の両方をもたらしてくれる。損か得かでは整理できないんですよね。

自分の時間をどう作るか、日々の工夫を知りたい方はこちら。

本当に変わってほしいこと

男性育休の普及と労働年齢の引き上げ

“育て続ける”を求める社会の歪み

わたしの会社でも、最近は男性が半年単位で育休を取得するケースが珍しくなくなってきました。
育休明けに育児を分担しながら成果を出し、キャリアを積んでいる部下も実際にいます。

それ自体は良い変化だと思っています。
でも同時に、今の社会には依然として「キャリアを止めないこと」「ブランクを作らないこと」「働き続けること」を暗に求める空気があります。

育休を取っても、「取っただけ」では評価されにくい。
育休明けに「元通り」のスピードで戻れないと、なんとなく後ろめたい空気が漂う。
制度は整ったのに、価値観がついてきていない——そこに歪みがあります。

数年離れても戻れる社会が理想

わたしが本当に変わってほしいと思うのは、「働き続けることを求める社会」ではなく、「数年仕事から離れることがあっても、戻ってきて成果を出せば再び活躍できる社会」です。

70歳まで働くことが当たり前になりつつある時代に、子育て期の数年を育児に使うことは、むしろ自然で合理的ではないでしょうか。
人生100年のスパンで見れば、「子育てのために数年ペースを落とした」ことは、長期的なキャリアのごく一部に過ぎません。むしろ、限られた期間でしか体験し難い、貴重な人生経験を積んだと言えるでしょう。

問われているのは、「リトライを正しく評価する社会の設計」なのだと思います。

めのめ

育休後の部下を受け入れる側として、「どうすれば戻りやすい職場になるか」は、管理職として常に考えていますね。

育休から復帰した部下を迎える管理職の方に向けた記事はこちら。

まとめ|損/得を超えた視点で

流れ星

「子育て罰(チャイルドペナルティ)」は、確かに存在する社会構造の問題です。
日本では特にその影響が大きく、女性への影響は特に深刻で、変えていく必要があります。

同時に——この記事を通じて伝えたかったのは、「子育て罰」という言葉だけでは語りきれない、父親としての実感です。

この記事のまとめ

  • チャイルドペナルティは個人の問題ではなく、構造的な課題(ゴールディン研究)
  • 日本は先進国でも特に深刻:出産後に女性の賃金が約70%減少
  • 父親にも制限はある(昇進・転職・副業)。ただし女性側の大変さとは次元が違う
  • 制約から生まれた「挑戦心」や「時間への意識」は、子育てを通じて得られたもの
  • 目指したい社会は「育て続けること」より「数年離れても戻れる社会」

子育てで失うものは確かにあります。自由も減ります。選択肢も狭まる瞬間があります。
それでも、子育てを通じて得た選択肢も、アップデートされた自分も確かに存在する——「損か得か」だけで語り切れないのが、子育てというものだと思っています。

「子育て罰」という言葉を知ったうえで、自分なりの答えを考えてみようかな。

めのめ

そう。制度や社会への問いかけと、自分自身の実感——両方を持ち続けることが大切だと思います。

あなたはどうですか。子育てを通じて、「得た」と感じるものはありますか。

昇進・キャリアと子育てが交差するテーマに関心がある方はこちらも。


日本では第1子出生後に女性の賃金が約70%減少。デンマーク(約30%減)と比べ、日本のチャイルドペナルティは先進国最大規模。

出典:財務省総合政策研究所「チャイルドペナルティとジェンダーギャップ」(古村典洋、2021年度)

Nobel economics prize awarded to Claudia Goldin for work on women’s pay.

出典:BBC.com「Nobel economics prize awarded to Claudia Goldin for work on women’s pay
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