
昔ほど出世に興味が持てない



昇進のために頑張る意味がわからない
──そんな気持ちを抱えていませんか。
20代・30代の会社員のあいだで“出世したい”という意欲が年々低下しているという調査結果もあり、
あなたがそう感じるのは決して珍しいことではありません。
私たちの親世代が「昇進=安定」だった時代とは違い、いまは仕事の価値観も働き方も多様化しました。
終身雇用や年功序列が崩れつつある中で、出世のために長時間労働や人間関係のしがらみに耐えることが、
必ずしも“得”ではないことを多くの人が気づき始めています。


とはいえ「やる気がないと思われたら評価が下がるのでは」「このままでキャリアは大丈夫?」と、
不安やモヤモヤを抱くのも自然なことです。
本記事では、現役マネージャーで10名程度の部下を持つ筆者が、
出世意欲が下がる背景とその心理を整理しながら、出世だけがキャリアではないこと、
そして自分に合ったキャリアデザインを描くための具体的なヒントをお伝えします。
読み終えたときには、自分が納得できる働き方を選ぶための判断軸をクリアにし、
これからのキャリアを選ぶための第一歩を踏み出せているはずです。
昇進は手段であって、目的ではない


昇進には、給与アップや裁量の拡大、成長の機会といった確かなメリットがあります。
一方で、責任の増加やワークライフバランスの崩れ、精神的負担といったデメリットも無視できません。
大切なのは、「昇進が自分の価値観や将来設計に合っているか」を基準に判断することです。
あなたが成し遂げたいこと、理想のライフプラン、人生で大切にしたいものを改めて見つめ直し、
そのうえで昇進が本当に必要かどうかを見極めていきましょう。
次の章では、その判断に役立つよう、昇進のメリットとデメリットを整理していきます。


昇進のメリット・デメリット


メリット | デメリット |
---|---|
給与や待遇の向上:生活設計や金融的な余裕につながる。 裁量の拡大:仕事のやり方や意思決定に関与できる自由度が増える。 成長機会の拡大:新しい仕事や役割、人との出会いなどあらゆる成長機会が増える。 市場価値のアップ:マネジメントや組織運営の経験は市場価値になる。 部下育成のやりがい:他者の成長に寄与する達成感。 | 責任とプレッシャーの増大:部下の評価や業績責任は精神的負荷が高い。 ワークライフバランスの悪化:残業や対応の緊急度が上がりがち。 板挟みの立場:上層部と現場の調整役として疲弊することがある。 報酬が負担に見合わないケース:昇給幅が期待以下で「割に合わない」と感じる人も多い。 |
これらの事実を踏まえて若年層の間では「出世したくない」と答える割合が無視できない水準で存在しています。
20〜40代で「出世したい」と思う人の割合と「思わない」人が拮抗しており、二極化する傾向があるのです。
つまり、昇進は“得るもの”と“失うもの”が明確にあり、個人の価値観で評価が分かれるのです。



わたしはメリットでは市場価値を、デメリットではワークライフバランスを一番重視しています。
筆者のマネージャー経験から(リアルな実感)


私自身、数年前にマネージャーへ昇進しています。
まずお伝えしたいのは、「仕事に割く時間」は確実に増えた、ということです。
現代の日本におけるマネージャー/管理職の一歩目は、そのほとんどが「プレイングマネージャー」です。
つまりこれまで出していたプレイヤーとしての成果の維持は前提で、マネージャーとしての仕事が増えるのです。
しかも全く新しい仕事なので、必要なインプットも増えます。
「仕事に割く時間」が増えるのは必然ですよね。
一方で、ワークライフバランスという面では、逆に改善しました。これは「裁量権」が拡大したためです。
具体的には「リモートワークの比率」「定例会議の頻度や形態の見直し」などチーム中で決定できる立場になったことや、判断・決定をする自分を中心にスケジュールが組まれるように変化したこと、休暇取得や定時退社について自分が率先してとり、それを発信することで雰囲気を醸成できた点です。
これにより、妻と毎月2人でランチ、子供のイベントに参加、長期休暇で家族旅行など、メリハリの効いた生活を送れるようになり、家族も含めて満足度が上がりました。


「責任の重さ」に関しては、プラスマイナスを含めて、私はあまり変化はありませんでした。
元々プロジェクト型で働いており、プロジェクトマネージャーやリーダーとして務めていたので、
メンバの仕事の成否に責任を持つことや、トラブルで責任者として深夜、休日に対応せざるを得ないケースがある…
というのは経験済みだったからです。
総合的に見て、わたしは今の立場への昇進は正解だと捉えています。
ただ、プレイヤー時代と比べて、心身ともにバランスを取る難しさは常に感じています。
結局のところ、マネージャーを続ける中で学んだのは、自分の価値観やライフプランを把握することが本質であり、
それに合わせた選択はもちろん、選択した結果を受け止めて適応していくことが重要だということです。
昇進以外にも選択肢は存在する


具体的に昇進を選ばない場合のキャリアについて、代表的なものを紹介します。
- 専門職(スペシャリスト):技術や専門性を深めて市場価値を高める。
- スローキャリア:無理に出世せず自分のペースで働く。
- 転職:自分の実現したいことや、望むキャリアや働き方の実現できるよう職場を変える。
- パラレルキャリア:副業や兼業で別の収入源・やりがいを作る。
- 独立・起業:リスクはあるが裁量と自由が圧倒的に大きい。
どのキャリアが正解というものではなく、自分の価値観や将来設計に合っているか重要なため、あなたに合ったキャリアを選択する必要があります。
自分軸で判断するための実践案
仕事に対する価値観トップ5を書き出す


年収、労働時間、勤務地、雇用の安定など、分かりやすいものから、
裁量権などの自由、一緒に働く人、いろんなことにチャレンジできる環境か…など
あなたにとって重要なことをできるけ具体的に優先順位をつけてください。
その上で、昇進したときにその順位がどう変わるかを想像してみましょう。



めのめの現時点でのトップ5
1位:家族を養うための最低限かつ安定した収入
2位:ロケーション/リモートワーク有無
3位:将来的な自身の市場価値への影響
4位:働き方や休み取得に対する裁量
5位:年収(高ければ高いほどよい)
25年・10年のライフプランをラフに描く


ライフプランといわれるとハードル高いですが、ここでは完璧な設計図を作る必要はありません。
おすすめしたいのは、25年先・10年先を1つの基準にラフに描くことです。
- どこに住んでいたいですか?
今の住居は、持ち家、アパート、実家など人によると思いますが、25年後も住みたいですか?
25年後の現在の家をイメージできていますか?
住んでみたいと思い描いていたものはありませんか? - 働いているなら、どんな働き方をしていたいですか?(フルタイム、パート、独立など)
今の働き方を続けていきたいですか?
25年後に同じ働き方は続けられそうでしょうか? - 家族構成は?(子ども独立後、介護の有無など)
お子さんがいる方は、独立しているでしょう。
未婚の方は結婚していますか?子供はできていますか?
ご両親など介護に関する話しあいや計画は行っていますか? - 健康状態は?(仕事を続ける体力や趣味を楽しむ体力)
まだ先でよい、将来やればよいと思っていたことは、25年後の心身でもできそうでしょうか? - 人生でやりたいことは?
家族で海外旅行に行きたい、副業に挑戦してみたい、親に車や家をプレゼントしたい…
明日にはできないかもしれませんが、いつ実行するのか決めてみましょう。
それぞれの理想を実現するために昇進でこれらの実現に近づくか、遠ざかるかを判断しましょう。
先行く先輩の話を聞く


上司や先輩など、実際にマネージャーを経験している人に、整理した内容をベースに話を聞いてみましょう。
リアルな情報を得るには社内の人が理想ですが、
適任者が見つからない場合は社外でマネージャーとして働く人でも構いません。
外の世界を知ることで、視野がぐっと広がることもあります。
こうして対話を重ねながら、信頼できる相談相手を見つけておくことも大切です。
昇進の道を選んだ後も、迷ったときや壁にぶつかったときに頼れる存在が一人いるだけで、心強さが変わります。


簡易セルフ診断


- タイトなスケジュールや情報が常に揃っていない状況で、自分で判断を下すことに耐えられるか?
- 自分の目標達成を前提に、チームの目標達成のためにはそれ以上に行動できるか?
- 人の仕事の成否を自分事として捉えることに耐えられるか?
- 人の育成や成長に喜びを感じられるか?
- 部下に言いにくいことも、ごまかさずに話せるか?
- 自分一人で抱え込まず適切に周囲に助けを求められるか?
- 時給マインド(働いた時間分に給与に反映される)から脱せられているか?
- 収入の伸びや裁量の拡大が自分の生活の満足につながるか?
- 今の会社で昇進すると、将来の選択肢は増えるか?



YESが多い人は昇進は向いている可能性が高いです。
半々ぐらいになる場合は、自分の価値観を深堀りしたり、前の項で紹介した通り先行く先輩に話を聞いて管理職のリアルを確認して、解像度を上げてみましょう。


スローキャリアを選ぶ前に考えてほしいこと


「今の働き方に大きな不満はない。だからこのまま現状維持でも構わない――」
ここまでの記事を読んで、そう思っている人もいるかもしれません。
しかし、スローキャリアを選ぶ場合は、もう一度立ち止まり、5年後・10年後を想像してみてください。
多くの会社では、一度「昇進ルート」から外れると再びチャンスをつかむのは簡単ではありません。
「今は現状維持、数年後に昇進を目指せばいい」と考えても、実際には難しいケースが多いのです。
つまり、“今、昇進を目指すかどうか” は将来を見据えて判断する必要があります。


ここで自分に問いかけてみてください。
- この会社で働き続けたとして、5年後も待遇や役割がまったく変わらなくても満足できますか?
- 将来転職を考えるとき、管理職やリーダー経験があった方が、希望の条件で採用されやすくないでしょうか?
- もし会社の業績が悪化やあなた自身が望む条件と折り合わなくなった場合、同じ条件で仕事を見つけられる自信はありますか?
- 結婚・出産・両親の介護など、ライフスタイルが変化したとき、今のままで柔軟に対応できるでしょうか?
これらの問いは、キャリアの方向性を決めるための“現実的な視点”です。
スローキャリアを選ぶこと自体は悪いことではありません。
しかし、「今はまだ決断しなくていい」と先送りでスローキャリアを選ぶことは、将来の選択肢を狭めてしまう可能性があります。
だからこそ、現状に満足している今こそ、自分の価値観やライフプランを整理し、
「自分にとって本当に望むキャリアの形は何か」をじっくり考えてみることが大切です。
自分の価値観と向き合って歩き出そう


昇進は魅力的な選択肢ですが、万人にとっての“正解”ではありません。
価値観が多様化し、人口減少や経済停滞に悩む現代日本においては、その傾向が強くなっています。
待遇・役務・責任・裁量という複数軸で天秤にかけ、短期的な感情で決めずに、
あなたの将来を見据えて判断することが大切です。
まずは小さな行動で「試す」ことをおすすめします。
「選択」は重要ですが、より重要なのは、裏付けとなる自分の価値観やライフプランを正しく把握していることです。
それができていれば、何度でも見直して、適応していけます。
あなたにとっての「正解」を見つける旅の一歩を、是非今日から始めてみてください。
本記事は以下の資料を参照しています。
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https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000310.000025661.htmlz
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